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ピーター・グライムズ

Peter Grimes





オペラ・データ

【作曲】
ベンジャミン・ブリテン(1944~45年に作曲)

【初演】
1945年6月7日 ロンドン、サドラーズ・ウェルズ劇場

【台本】
モンタギュー・スレーター(英語)

【原作】
ジョージ・クラッブ長編物語詩『地域』

【演奏時間】
プロローグ 10分
第1幕 45分
第2幕 50分
第3幕 45分  合計 約2時間30分



あらすじ

【時と場所】 
1830年頃、イギリス東岸の小さな漁村

【登場人物】
ピーター・グライムズ(T): 漁師
エレン・オーフォード(S): 40才くらいの未亡人の教師
バルストロード船長(Br): 退役船長
少年(ジョン)(黙役): 孤児
ほか

【プロローグ】
時は1830年頃、舞台はイギリス東岸の小さな漁村。漁師のピーター・グライムズは、漁の途中で徒弟を死亡させてしまい、疑惑の目で見る村人たちが集まる中で裁判にかけられました。判決は不慮の事故ということになりましたが、ピーターは今後、少年を雇わないように言い渡されます。

【第1幕】
数日後、海辺で漁師たちが働いていますが、誰もピーターを手伝おうとはしません。教師で未亡人であるエレンは、ピーターに心を寄せ、彼のために孤児院の少年を引き取ることにします。その夜、嵐の中、エレンがパブ「ボーア亭」に少年を連れてきました。村人から白い目で見られる中、ピーターはエレンに礼も言わないで少年を連れて帰ります。

【第2幕】
数週間後の日曜日、教会でエレンは、少年の身体にアザがあることに気がつきます。エレンがピーターを問い詰めると、逆上したピーターは彼女にも手をあげ、少年を漁に連れ出しました。怒った村人たちがピーターの家に押しかけようとします。ピーターは少年に早く家を出て崖下の船に乗り込むように急かします。少年は崖を降りる際に足を滑らせて海に落下してしまいました。

【第3幕】
数日後の月夜、エレンは、退役船長であるバルストロードに、崖下で少年のセーターを見つけたことを相談します。二人は、村人たちが行方知らずのピーターを捜索する中、先に彼を見つけます。このときすでにピーターの心は錯乱状態にあり、家に帰ろうと話すエレンの言葉も届きません。バルストロード船長は彼に、船で陸が見えなくなるまで出て、そこで船を沈ませるように促しました。村では、ピーターのことは噂話の一つとして忘れられたのでした。



解説(ポイント)

【1】 イギリスを代表するオペラ作曲家ブリテン誕生
 
イギリスでは、17世紀にヘンリー・パーセル(1659?-1695)が作曲家として世界的な地位を得て以来、ずっと音楽を需要する側にあって、いわゆる大作曲家が出ていませんでした。そこにエドワード・エルガー(1857-1934)が交響曲で成功します。他にも、ヴォーン・ウィリアムズ(1872-1958)やウィリアム・ウォルトン(1902-1983)などが出ますが、イギリスを代表する作曲家として筆頭に挙げられるのがブリテンです。ブリテンが、オペラ作曲家としてスタート地点に立った、そして代表作となったのが、オペラ『ピーター・グライムズ』です。ブリテンは、このオペラの初演時で31歳、最初の成功オペラ作品となりました。
 
【2】 ブリテンのオペラ作曲法
 
同じ20世紀の作曲家としてR.シュトラウスのドイツ・オペラが、鮮やかな管弦楽法で彩られた音楽であるのと比較して、ブリテンのオペラは、旋律線を紡ぐように音楽が構成され、登場人物の内面の表情を描き出すところに特徴があります。R.シュトラウスとは別の筆跡で、オペラ作曲の頂点にたどり着いたとも言えるでしょう。オペラ『ピーター・グライムズ』では、小さな漁村という閉鎖的な社会にあって、部外者(アウトサイダー)の孤独や疎外感が表現されています。第1幕でピーターが歌う「今、大熊座とプレアデス星団が」 "Now the Great Bear and Pleiades" では、高い「ミ」の音をピアニッシモから歌い続け、異様な効果を実現しています。
 
【3】 音楽で描かれる風景と心情
 
このオペラの各幕各場には、6つの間奏曲が用意されており、これは有名な「4つの海の間奏曲」(夜明け、日曜日の朝、月の光、嵐)としても独立して演奏されます。オペラの聴きどころとしては、初演時にはもちろんブリテンの盟友ピーター・ピアーズが歌ったタイトルロールの心情が語られる歌唱にあります。また、彼に同情するエレンが第2幕の清々しい日曜の朝、穏やかな気持ちで歌いだす「波のきらめき、日の光のまぶしさ」 "Glitter of waves and glitter of sunlight" では、ピーターの裏切りが次第に明らかになる様子が描かれました。そしてピーターがどのように村から排斥されることになるのか、ラスト・シーンも見逃せません。



おすすめディスク

【CD】
ブリテン指揮
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
ピアーズ(T) ワトソン(S) ピーズ(Br)
(録音1958年、DECCA)
作曲者ブリテンによる自作自演。もちろんタイトルロールはピアーズが歌います。20世紀オペラの代表作の歴史的録音です。







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