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修道女アンジェリカ

Suor Angelica





オペラ・データ

【作曲】
ジャコモ・プッチーニ 1917年に作曲

【初演】
1918年12月14日 ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場

【台本】
ジョヴァッキーノ・フォルツァーノ(イタリア語)

【原作】
フォルツァーノのオリジナル台本

【演奏時間】
全1幕 約1時間



あらすじ

【時と場所】 
17世紀末、イタリアのトスカーナ地方

【登場人物】
アンジェリカ(S): 修道女
公爵夫人(A): アンジェリカの伯母
修道女たち
ほか

【全1幕】
時は17世紀末、舞台はイタリアのトスカーナ地方にある女子修道院。貴族の娘であったアンジェリカは、7年前に未婚で子どもを産んだことを一族から家名を汚したと非難され、修道院で生活していました。修道女たちの間で、1年前に亡くなったシスターのことを話していると、アンジェリカは「死は生を美しいものにする」と語ります。

そのとき、修道院に四輪馬車が到着し、アンジェリカの伯母である公爵夫人が7年ぶりに面会に来ました。公爵夫人はアンジェリカの妹が結婚するため、親の遺産相続権を放棄するように求めます。アンジェリカは書類にサインするとともに、生き別れとなっていた自分の息子がどうしているか、伯母に尋ねました。しかし、その子は2年前に伝染病にかかり、亡くなっていたのです。

母もなく死んでいった子どものことを想い、アンジェリカは天国で子と再会することを望みます。しかし、神に仕える修道女にとって自殺は罪となります。苦しむ中でアンジェリカが祈ると奇蹟が起こります。聖母マリアが子どもとともに現れて、アンジェリカがその子に手を伸ばすと、子どもが一歩ずつ彼女に近づき、アンジェリカはそのまま天に召されたのでした。



解説(ポイント)

【1】 女性だけのオペラ
 
プッチーニは、パリのグラン・ギニョール座で3つの人形劇を観て、3部作を着想しました。この劇場では、恐ろしい話、哀れな話、そして滑稽な話の3本を一夜に上演して人気を博していたと言います。このオペラ『修道女アンジェリカ』の最大の特色は、登場人物がすべて女性であること。合唱は修道女たちの女声合唱となります。プッチーニの2才上の姉は、ルッカのヴィコペラーゴ女子修道院の院長でした。最後の奇蹟の場面における合唱について、プッチーニは、修道院の神父からラテン語の歌詞を得て作曲したそうです。
 
【2】 登場人物の人間模様
 
アンジェリカは、突然来訪した伯母の公爵夫人から遺産を放棄させられますが、これにはアンジェリカのバックグラウンドを理解する必要があります。アンジェリカの父グアルティエロ公爵と母クララは20年前に亡くなり、幼いアンジェリカと妹のアンナ・ヴィオラ、そしてその財産は、母の姉、すなわちアンジェリカの伯母に託されます。伯母は幼い二人の姪を13年に渡り育てますが、アンジェリカが未婚のまま子どもを産むという、当時の貴族社会では許されない汚点をつけることになり、アンジェリカは修道院に出されたのです。伯母が、アンジェリカと7年ぶりに再会するとき、彼女が産み落とした子どもは2年前に亡くなっていました。この伯母にも、多くの苦労と葛藤があったはずです。そんな人間模様を、プッチーニは小さなオペラの中で描くことに成功しています。
 
【3】 ドラマの中心、アンジェリカのアリア
 
アンジェリカと7年ぶりに再会した伯母の公爵夫人が、過去と現在について語り合う場面は見ごたえがあります。その後、アンジェリカが歌うアリア「母もなく、ああ、坊や、お前は死んだのね」"Senza mamma, o bimbo, tu sei morto"は、このオペラの到達点としてプリマ・ドンナの力量が問われる屈指の場面であり、まさに歌の力によってオペラの成否が左右されるのです。



おすすめディスク

【DVD】
パッパーノ指揮、ジョーンズ演出
ロイヤル・オペラハウス管弦楽団、合唱団
ヤオ(S) ラーション(Ms)
(録画2011年、OPUS ARTE)
ジョーンズによる読み替え演出は好き嫌いが出るものの、公爵夫人が出てきての掛け合いが見どころ。演奏も手堅い。







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