2023年新刊
名作オペラをやさしく解説
面白いほどわかる!
オペラ入門
名アリア名場面はここにある
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,800円+税
詳しくはこちら
|
オペラのことをいちから学ぶ
声、歌、音楽、演出について
オペラ鑑賞講座 超入門
楽しむためのコツ
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,600円+税
詳しくはこちら
|
「オペラ情報館」が
本になりました
オペラにいこう!
楽しむための基礎知識
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,600円+税
詳しくはこちら
|
|
声域や声質などを併せて考慮し、オペラ歌手の声の種類を特定するもの。人の声は千差万別であり、「声種」という用語自体、何を意味するのかは文脈によるところが多いのが現状です。モーツァルト、ロッシーニ、ヴェルディ、ワーグナーなどの特定のオペラ作曲家については、そのオペラ作品を歌うために相応しい歌唱様式が求められることもあり、こうした歌唱技術を習得している歌手、もしくは、生来こうした特定のオペラを歌うのに適した声を持つ歌手のことを、例えばロッシーニ歌手、ワーグナー歌手と呼ぶこともあります。
|
人の声に関する高低の範囲のこと。オペラでは、歌手の声を声域によってグループ分けしており、一般に女声を高い方からソプラノ、メゾ・ソプラノ、アルト、男声を高い方からテノール、バリトン、バスに分けています。ソプラノ部分を歌う変声期前の少年のことをボーイ・ソプラノとも言います。
|
人の声に関する音色の違いによる性格分け。オペラでは、声域による生理的な分類だけでなく、オペラの登場人物の持つ性格や感情を表現するために相応しい音色を持つ声や、作曲家が要求した楽句を歌いきる技術を持つ声などによって歌手の声が区分されています。例えば、レッジェーロ(軽い)、リリコ(叙情的な)、スピント(力強い)、ドラマティコ(劇的な)などをはじめ、2つ以上の形容詞を使用し、リリコ・レッジェーロ、リリコ・スピントなどと細分化されることもあります。
|
イタリア語で「上」を意味するsopraに由来し、女声のうち最も高い声域で、一般におよそ1点ハ音から2点ロ音まで、もしくは、ロ音から2点ホ音までを歌います。ソプラノには、様々な種類の役柄が割り当てられ、19世紀以降はオペラの中心人物を受け持つことが多くあります。ソプラノ・レッジェーロは最も軽い声で、コロラトゥーラ・ソプラノも含まれ、『魔笛』の夜の女王、『ランメルモールのルチア』のルチア、『ナクソス島のアリアドネ』のツェルビネッタなどがいます。ソプラノ・リリコには一般的なソプラノが当てはまり、『椿姫』のヴィオレッタ、『フィガロの結婚』の伯爵夫人、『魔笛』のパミーナなどがいます。ソプラノ・ドラマティコは劇的な表現を可能にする声で、代表格は『トゥーランドット』『サロメ』のタイトルロール、『マクベス』のマクベス夫人などがいます。他に、ワーグナー作品を得意とするソプラノをワーグナー・ソプラノと呼ぶことなどがあります。
|
メゾ・ソプラノ mezzo-soprano [伊] |
女声のうち、ソプラノとアルトの中間の声域で、一般におよそロ音から2点ト音まで、もしくは、ト音から2点ロ音までを歌います。イタリア・オペラで軽快で俊敏なメゾ・ソプラノは、『セヴィリアの理髪師』のロジーナ、『チェネレントラ』のアンジェリーナなどロッシーニのオペラの主役を受け持ちます。逆に強い声のメゾ・ソプラノは、『アイーダ』のアムネリス、『ドン・カルロ』のエボリ公女などヴェルディの個性的な諸役を歌うことになります。フランス・オペラには、『カルメン』のタイトルロール、『サムソンとデリラ』のデリラ、『ウェルテル』のシャルロットなど主役級の重要な役柄があります。現代では、メゾ・ソプラノの技量が向上して高音域の声を出すことにより、ソプラノとメゾ・ソプラノの境界が曖昧となる傾向もあります。
|
アルト(コントラルト) Alt [独] contralto [伊] |
アルトはイタリア語で「高い」を意味し、もともとは男声の高い声域のことを指していたとされます。また、コントラルトはイタリア語で「高声に対するもの」を意味します。一般に女声のうち最も低い声域で、およそト音から2点ヘ音まで、もしくは、ホ音から2点イ音までを歌います。現代の歌手には希少な声域であり、アルトという名称は使われないことが多いです。オペラの中では、老婆や魔女などその性格を強調する際にアルトとして示されることがあります。ほとんどの場合、メゾ・ソプラノの歌手がこれらの役柄を歌っているのが現状です。
|
テノール tenore [伊] tenor [英] |
本来のイタリア語では「テノーレ」と発音し、「保持すること」を意味します。オルガヌムの聖歌旋律の置かれた声部をテノルと呼んでいました。男声のうち最も高い声域で、一般におよそハ音から1点イ音まで、もしくは、ろ音から2点ハ音までを歌います。19世紀以降、ソプラノの女性に対する相手役として存在感を見せ、オペラの中で花形の役柄に割り当てられるようになりました。ロッシーニのオペラに代表するような軽く、俊敏な動きで高音を出すことを求められる役から、ヴェルディやワーグナーのオペラのように重く、劇的な表現を必要とする役まで幅広い声質がテノールにはあります。後者の重く、劇的な声質をイタリア・オペラではドラマティコと呼び、例えば『オテロ』のタイトルロールが挙げられます。同様の声質についてドイツ・オペラでは、特にワーグナーの諸役、例えばトリスタンやジークフリートを歌うテノールのことを「英雄的な」を意味するヘルデン・テノールと呼んでいます。また、オペラの中で重要な立ち回りをする役、例えば、『ジークフリート』のミーメ、『魔笛』のモノスタトスなどを特徴的な声で誇張した表現を実現している歌手を特にキャラクター・テノールと呼ぶこともあります。
|
本来のイタリア語では「バリトノ」と発音します。古代ギリシャ語のbarýtonos(低い音)に由来する語です。男声のうち、テノールとバスの中間の声域で、一般におよそい音から1点ヘ音まで、もしくは、へ音から1点ト音までを歌います。特に音色が明るく、高音域が出るバリトンをハイ・バリトンと呼ぶことがあります。19世紀に入るまでバリトンの声域は、バスの声域と一括りにされていました。19世紀前半以降、バリトンとしての位置づけが明確に意識され、ソプラノとテノールを主役にして、これらの敵役、悪役としての役割があてがわれました。『リゴレット』のタイトルロールや『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のザックスなど、バリトン特有の充実した中間声域の表現力を活かしてオペラの中心人物を担うことも多くあります。役柄や歌手の持つ声の音色によって様々な性格分けがなされ、伸びやかな発声で旋律を歌い上げるバリトン・カンタンテ、騎士のように気高く端正な声を持つカヴァリエ・バリトンなどと呼ばれます。また、フランスの歌手ジャン=ブレーズ・マルタン(Jean-Blaise
Martin, 1768-1837)に由来するバリトン・マルタンはテノールのような柔らかく軽い声質と高音域を持ち、『ペレアスとメリザンド』のペレアスが代表的な役として挙げられ、カミーユ・モラーヌ(Camile
Maurane, 1911-2010)、ジャック・ジャンセン(Jacques Jansen, 1913-2002)がその好例として認識されています。ヴェルディのオペラでは、『マクベス』などのタイトルロールや、『ドン・カルロ』のロドリーゴ、『オテロ』のイアーゴなどオペラの要になる役にバリトンを配置しており、このようなヴェルディのバリトンの諸役を、力強い確かな発声で、高度な表現力をもって歌うことができる歌手をヴェルディ・バリトンと呼んでいます。
|
バス・バリトン bass-baritone [英] |
バリトンとバスの間の声種及びその声域を持つ歌手のこと。バスの音色を持ち、重量感のあるバリトンや、比較的高音を響かせる明るい声質のバスを指すことが多いです。20世紀の名歌手ハンス・ホッター(Hans
Hotter, 1909-2003)が一例。
|
本来のイタリア語では「バッソ」と発音します。男声のうち最も低い声域で、一般におよそ、ほ音から1点ホ音まで、もしくは、は音から1点ヘ音までを歌います。18世紀のオペラ・セリアの役柄では、老人や権力者など脇役を務めることが多かったのですが、オペラ・ブッファでは主要な登場人物を受け持つこともありました。19世紀前半以降、ロッシーニの『セヴィリアの理髪師』のフィガロ役のように高音域やアジリタが求められると、これらがバリトンという新たな声種として独立し、バスと区別され始めました(森田学「項目:バッソ」『オペラ事典』(東京堂出版、2013年)335-336頁)。バスの中の性格分けとしては、特にオペラ・ブッファで活躍する『フィガロの結婚』のフィガロ、『ドン・ジョヴァンニ』のレポレッロなど滑稽な役柄を指すブッフォや、低音域の重さや威厳に満ちた表現を持つ「深い」を意味するプロフォンドと呼ばれる声があります。
|
カウンターテナー(カウンターテノール) counter tenor [英] |
男性がファルセットを用いて女声のうち主にメゾ・ソプラノの声域を歌います。元来はルネサンスの多声声楽曲の中でテノル声部より上の声部をコントロテノーレと呼んでいました。現代では、バロック期のオペラでカストラートのために書かれた役を歌ったり、『こうもり』のオルロフスキー公爵など特殊な役を受け持ったりしています。
|
ソプラノの音域を歌うことができるカウンターテナーのこと。または、ソプラノの音色を持つカウンターテナー。
|
去勢された男性歌手のこと。去勢により、喉頭は少年のまま変声期以前の声域を保持し、肺は成人として成長することから、その声は独特の音色で力強さを持ち、声域が非常に広い歌手でした。女性が公共の場で歌うことを禁止したローマ・カトリック教会によってその存在を正当化されました。16世紀半ばから主に宗教音楽で活躍しましたが、17世紀から18世紀にかけてオペラでも活躍しました。特に18世紀中頃のオペラ・セリアでは、オペラがカストラートの技量や能力を見せるための手段として使われました。ヨーロッパ各地で名声を得たカストラートとして、セネシーノ(Senesino (Francesco Bernardi), 1680頃-1759頃)、ファリネッリ(Farinelli (Carlo Broschi), 1705-1782)などがいます。グルックのオペラ改革を契機に、ドラマとして人間を描く真実性が追求され始めたことや、オペラ・ブッファの興隆から、カストラートは衰退し、オペラハウスから締め出されました。現代では、カストラートのための役柄を歌う場合には、カウンターテナーや女性が代行するか、もしくはオクターヴ下げてテノールが歌うこととなります。
|
|