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オペラでは、音楽面の直接的な統括者であり、歌手(キャスト、合唱団員)、オーケストラの団員の音楽面を取りまとめます。時には舞台上で起こるタイミングを指示することもあります。17-18世紀のオペラでは、演奏の取りまとめ役は通奏低音を受け持つ鍵盤楽器の奏者でしたが、オーケストラの規模が大きくなるに伴い、第一ヴァイオリンの首席奏者(コンサートマスター)がこの役を担いました。指揮棒を持った独立した指揮者の登場は、19世紀、ウェーバーの世代まで待つことになります。その場合でも、当時はオーケストラを背にして、歌手に近いところで指揮をしていました。オーケストラ・ピットの今日の指揮者の位置、すなわち、オーケストラを全て統括できる客席との間の位置に指揮台を置いたのは、オーストリアの指揮者エルンスト・フォン・シュフ(Ernst von Schuch, 1846-1914)からでした。それまで作曲家が自作を指揮していたことが多かったのですが、ハンス・フォン・ビューロー(Hans von Bülow, 1830-1894)は、作曲家と切り離された職業指揮者としての位置づけを確立させました。こうして指揮者によって楽曲が解釈され、演奏されることになったのです。20世紀に入り、オーケストラへの関心が高まり、また、レコード、ラジオ放送など音楽を流通させるメディアが広まると、オペラ上演、録音に際してその芸術性を一身に集める指揮者が注目されるようになりました。
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副指揮者 maestro sostituto [伊] |
指揮者をオペラの制作面から補佐する人です。一人の指揮者に対し、複数人の副指揮者が配置されます。稽古中に指揮者の代役として指揮したり、本公演の最中に指揮者を見ることができない場所にいる歌手やバンダに対して舞台袖や照明室などから合図を送ったりします。
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1. オペラでは、歌手が歌うことに加えて、現実とは異なり、音楽が鳴っている状態で物事が進行することが了解されており、音楽はオペラに不可欠な要素であり、その音楽をオーケストラが演奏します。オペラのオーケストラの役割には、序曲等を演奏すること、歌手の歌を伴奏すること、デュナーミクやアゴーギクなどのアーティキュレーションを付与することでオペラ全体の状態を形作ることのほかに、舞台の情景を描写すること、オペラ全体の雰囲気を作ること、場面の転換を効果的に行うこと、特定の舞台上の音を描写すること、人物の動作を表現すること、人物の性格を描写すること、その時々の心理状態を示すことなど様々な役割があります。モティーフを提示して劇の概念やシンボルを説明するといった役割については、ワーグナーの楽劇で使用されたライトモティーフの技法により確立されました。
2. オペラ史の開始からオーケストラは存在し、コンサート・ホールにおける演奏と密接な関係を持ちながら発展していきました。楽器編成についても時代とともにクラリネット、トロンボーンなどの管楽器が加わったり、ロマン派以降のオペラには大型の編成によるオーケストラが使用されたりします。逆に意図的に小さい編成を使用する室内オペラも試みられました。『アイーダ』のアイーダ・トランペット(ファンファーレ・トランペット)やワーグナーが『指環』のために用いたワーグナー・テューバなど、オペラによっては特殊な楽器が使用されることもあります。
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オーケストラ・ピット orchestra pit [英] |
オペラハウスで、舞台と客席の間に置かれたオーケストラが入るための場所。オーケストラという言葉は、古代ギリシャ語でそもそも舞台前方の半円形部分の場所を表す意味がありました。ワーグナーはバイロイト祝祭劇場を建設するに当たり、オーケストラ・ピットを舞台の下に沈み込むように配置しました。
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イタリア語で「ブラスバンド」「楽隊」を意味します。オーケストラ・ピットにいる楽団員とは別に、舞台上や舞台裏で演奏する器楽奏者のこと。例えば、モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』では、第1幕フィナーレのドン・ジョヴァンニ邸パーティの中で、sopra il teatroの指示のもと、舞台上の楽団員がメヌエットを演奏し、また、第2幕フィナーレのドン・ジョヴァンニの食事の場面で同様に舞台上の楽団員が当時の流行曲を演奏します。
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集団である合唱団がオペラ公演に向けて準備を進めるための責任者となります。リハーサルでは、音楽監督や指揮者の意向を反映した表現となるよう副指揮者、コレペティと協力して合唱団の指導を行います。また、演出家の意向をくみ、舞台上の合唱団の動きを補佐します。
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1. 合唱は、古代ギリシャ語のコロスkhorosに由来し、コロスはオペラのルーツとなるギリシャ劇でも合唱団と舞踊団を兼ねる役割がありました。楽譜が現存する最古のオペラ、ペーリの『エウリディーチェ』にも、合唱が含まれていました。オペラの規模が拡大すると、合唱は重要な役割を担うようになります。しかし、カストラートなどの活躍により、やがてオペラ・セリアが歌手の名人芸的な歌唱技術を披露する場となると、合唱の役割が減退していきました。また、オペラ・ブッファにおいても、歌手のやり取りを中心とするその特徴から合唱が縮小していきます。その中で、グルックのオペラ改革でオペラの劇的な部分が重視されると、合唱が多用されるようになりました。オペラの中で合唱は、フランスのグランド・オペラをはじめ、祝祭的な効果を発揮し、舞台を充実したものにしています。
2. 合唱団はオペラハウスの専属団員として契約された歌手で構成されます。一般にソプラノ、アルト、テノール、バスの編成となります。特定のオペラでは、児童合唱が必要とされる場合(『カルメン』の子供たちの行進、『ウェルテル』の子供たちの声など)、または児童合唱の方が効果が高い場合(『ヘンゼルとグレーテル』のお菓子の子供たちなど)もあります。
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主要なキャストが、病気や不慮の事故、その他の事情でやむなく降板した場合に代役を務める歌手のこと。本番に急遽、出演するためだけでなく、稽古期間中に本来のキャストが到着の遅れや病気など何らかの理由で欠席する場合にも、その穴埋めのために代役を務めます。若い歌手が経験のため、また、出演のチャンスを得るため、さらにはレパートリーを拡大するためにも良い機会となります。
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コレペティ(コレペティトゥア) Korrepetitor [独] |
主に音楽稽古の際にピアノで伴奏する役割を担います。単に伴奏者としての役割だけでなく、歌手の音取り、音楽的な解釈、発声法まで、歌手の音楽的な準備を全面的にサポートしています。
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歌手に歌い出しの歌詞を教える人。舞台とオーケストラ・ピットの間に、客席から目立たないようにプロンプター・ボックスが用意され、そこに待機したプロンプターが、歌手に歌い出しの歌詞やタイミングを指示するのです。
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演出家 producer [英] director [米] |
オペラ制作における舞台上の歌手の動きや演技、装置、衣裳のデザインなどの主に演劇面、視覚面のプランについての責任者。オペラの世界観や劇的な部分の意図を創出し、考えや思想的な意味合いを司る役割があります。オペラを媒介として、社会的・政治的なメッセージは発信され、それが評価の対象として注目を集めることもあります。
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オペラを上演するに当たり、その作品の背景や歴史などを調整し、演出や演奏の解釈に説得的な意味を持たせる仕事をします。こうした作品構造の分析を行い、演出家と協力することをドラマトゥルギーと言います。ドラマトゥルグはその公演の解釈について、プログラムの中で観客に説明し、観客の理解を助ける役割も果たします。
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読み替え演出とは、オペラ版来の時代背景、舞台・人物設定などを再構成し、原作とは異なる世界観の舞台を作り出し、古典的なオペラ作品に新しい意味や支店を付与して上演することです。台本にそった従来のオペラ上演を現在の芸術として蘇らせる行為として、現在ではその程度の差こそあれ、多くの公演が読み替え演出となっています。ただし、観客の作品理解と大きく異なる舞台が受け入れられないなど演出家の独断が批判の対象となることがあります。
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オペラ作品の一部を省略して上演すること。歴史的に様々なオペラ公演の制約に合わせて、カットが行われてきました。実際の上演でカットされたことが契機となって、それが改訂版として成立することもあります。聴衆の受容に合わせて時間的な短縮を施されることも多く、20世紀に入って過去の作品を繰り返し上演する時代になっても、多くのカットが横行してきました。20世紀後半から録音芸術が興隆すると、カットなしの全曲録音に対してその価値が評価されるようになりました。
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芸術監督 artistic director [英] |
芸術監督は、オペラハウスの公演にあたり、芸術面の責任者です。毎シーズンのテーマから具体的な上演作品を選定するなど、そのオペラがどのような芸術的な方向性を持つのか、全体の構想を練ります。その上で、指揮者、演出家、歌手などを選定していきます。音楽面については指揮者と、演出やその公演の意味づけについては演出家と協力してオペラ制作を運営していきます。
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総支配人 general manager [英] Intendant [独] |
総支配人は、オペラハウスの経営面や組織面の最高責任者です。オペラハウスの経営、すなわち財務、人事、組織などを管理し、オペラ公演が芸術的にも、運営的にも成功するよう進めていきます。ドイツのオペラハウスでは、芸術監督の役割を兼ねる総支配人としてインテンダントと呼ばれています。オペラの舞台に関するもののほかに、スポンサーや公的助成などとの関わり、演奏家のみならず劇場のスタッフや組合との関わり、広報・マーケティングの戦略や地域・社会貢献なども重要な役割です。
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スタジオーネ・システム stagione system [英] |
スタジオーネ・システム オペラ公演のスタイルで、一つのオペラを1〜3週間かけて集中的に数回上演し、その後、別のオペラを上演するといったように、一定期間に一作品を取り上げて、それを続けていく方法です。1年を通じた作品数は多くありませんが、一つ一つのプロダクションに指揮者、演出家、歌手を招き、個性的なオペラ公演となります。例としては、イタリアのオペラハウスや、音楽祭などがこの方式を採用しています。
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レパートリー・システム repertory system [英] |
レパートリー・システム オペラ公演のスタイルのうち、オペラハウスが複数の作品を入れ替えしながら繰り返し上演します。毎週、もしくは一日ごとに上演される作品が変わることもあり、観客は短期間で数種類のオペラを鑑賞することができます。そのために、オペラハウスでは歌手、オーケストラ、合唱団などが専属契約となり劇場に常勤しています。シーズンを超えて繰り返し上演されることもあり、評価の高いプロダクションが円熟していくメリットがあります。例としては、ドイツのオペラハウスやウィーン国立歌劇場がこの方式を採用しています。
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聴衆が歌手に対して再び歌うことを求めること。ビス(bis [仏]、二度、再びの意味)とも言います。オペラでは、17世紀のヴェネツィア・オペラで歌手が名人芸を披露することからアンコールが求められ、18世紀前半のオペラ・セリアで、カストラートの全盛期になると何度もアンコールが繰り返されました。アンコールによってオペラの進行が停滞することについては、名人歌手の技量を堪能する聴衆側と、オペラ全体の統一感を重視する制作側との間に常に論争を引き起こすことになっています。1792年にウィーンのブルク劇場で初演されたチマローザの『秘密の結婚』では、アリアやアンサンブルへのアンコールで3時間近くかかったとされます。現在のオペラ公演では、アンコールが介入される機会は多くないと言えるでしょう。
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