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「その他の歌の種類」に関する用語







レチタティーヴォ recitativo [伊]

1. オペラの台本のうち、登場人物が置かれた状況を説明する独白部分やドラマを進行させるための会話部分に音やリズムが付され、限られた抑揚で歌われます。レチタティーヴォは、主に散文の会話体に音が付けられ、叙述的な表現である点で、心情を発露し旋律的に歌われるアリアの対概念として理解されています。

2. フィレンツェでオペラの創作が始まったときは、すべての台詞(セリフ)が朗唱的に歌われたが、やがて歌として聴かせるアリアと、ドラマを進めるレチタティーヴォという二種類でオペラが構成されるようになりました。旋律的なアリアが登場人物の心情を描き出すことと比べ、レチタティーヴォは主にドラマの進行を担い、通奏低音による朗唱風のレチタティーヴォ・セッコとして区分され、次第にその機能的な役割が明確化していきました。レチタティーヴォは、アリア、重唱、合唱などで構成される番号オペラの曲間を埋めるように作曲されます。次第にレチタティーヴォ部分でも感情の抑揚を表現するようになり、オーケストラの伴奏が付いたレチタティーヴォ・アッコンパニャートが用いられるようになったのです。

3. 単なる「語り」「会話」ではなく、音とリズムが付いていることは、オペラの言語を母国語としない歌手にとっても、歌うことでその発音やイントネーションの不自然さを乗り越えることを可能とし、そのオペラの役を担当するための障壁を下げることができました。この事実は、オペラが他国で上演されることを後押しして、オペラの国際化に寄与した一つの要因だったとも言えるでしょう。



レチタティーヴォ・セッコ recitativo secco [伊]

「乾いた」レチタティーヴォの意味。単にセッコ(secco)とも言います。チェンバロなどによる通奏低音に支えられ、和音の伴奏の上で多くの歌詞が歌われます。音程やリズムは、言葉のイントネーションに近く、歌詞が明瞭に聞き取りやすいという利点があります。音楽的な表現には乏しく、アリアと比べると無味乾燥に聞こえますが、現代の演奏では、通奏低音を受け持つ奏者のアレンジによって表情豊かな場面が描かれることもあります。特にオペラ・ブッファにおける軽妙なやり取りに効果的な働きをします。



レチタティーヴォ・アッコンパニャート(オッブリガート)
recitativo accompagnato (obbligato) [伊]

完全に記譜されたオーケストラの伴奏付きのレチタティーヴォのこと。アリアの前に置かれ、これを引き出すために用いられることが多くあります。イタリア・オペラの改革が進むと、歌詞が一層叙情的となり、次第にレチタティーヴォ・アッコンパニャートが重視され、レチタティーヴォは音楽のその他の部分と一体化していきました。19世紀になるとシェーナの一要素として発展しました。



シェーナ scena [伊]

レチタティーヴォ・アッコンパニャート(オーケストラの伴奏付きレチタティーヴォ)から、より劇的に作曲され、独白や会話、さらには合唱などが加わってドラマを進行させるもの。主にロッシーニからヴェルディ周辺までのイタリア・オペラに用いられました。例えば、ヴェルディのオペラ『マクベス』第4幕第2場でマクベス夫人が歌うアリア「消えよ、呪われたこの血痕よ」"Una macchia è qui tuttora"は、「夢遊の大シェーナ」"Gran Scena del sonnambulismo"と題され、シェーナの中に位置付けられています。ヴェルディ後期以降は、多くのオペラで全体がシェーナの形で作曲され、自由な表現が重視されました。



シュプレヒゲザング Sprechgesang [独]
シュプレヒシュティンメ Sprechstimme [独]

ドイツ・オペラにおいて歌(ゲザング)と語り(シュプレッヒェン)の両方の性格を持つ歌唱法(レチタティーヴォ、叙述的な)の一種。実際には規定の音程とリズムの中で、歌と語りの中間のように表現します。19世紀末にフンパーディンクがオペラ『王様と子どもたち』の初期の稿で初めて用いました(完成稿では普通の歌唱としました)。その後、例えばシェーンベルクの『モーゼとアロン』、ベルクの『ヴォツェック』『ルル』で使用されました。



アンサンブル(重唱) ensemble [仏]

1. フランス語で「共に」を意味します。オペラでは、複数の登場人物が一人1パートを受けもつ重唱を指します。人数によって二重唱、三重唱、四重唱……と呼ばれるわけです。合唱の場面とは異なります。17世紀のヴェネツィア・オペラで現れたアンサンブルは、18世紀のオペラ・セリアにおいて幕の最終場面で使用されました。他方、オペラ・ブッファでも特にフィナーレでよく使用され、これはアンサンブル・フィナーレと呼ばれました。19世紀以降、アリアと並び、オペラの名場面としてアンサンブルは多用されています。

2. アンサンブルでは、2人以上の声の調和により、1人で歌う場合よりも響きの豊かな効果が期待できます。その役割として、登場人物のやり取りが可能であり、考えや感情を伝えるものとなるのです。例えば、二重唱では、お互いの愛を確かめ合うことや、対立する主張をぶつけ合うことがよく見られます。また、四重唱などでは、二組のペアが異なる階層で場面を作っているが音楽は結合している、というような立体的な表現が可能となります。モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』第1幕の四重唱「信じてはいけません、不幸な人よ」"Non ti fidar, o misera"、プッチーニの『ラ・ボエーム』第3幕の四重唱「さようなら、朝の甘い目覚めよ」"Addio dolce svegliare alla mattina!"などが好例として挙げられます。



アンサンブル・フィナーレ ensamble finale

一般にオペラ・ブッファにおいて、幕の最終場面で登場人物が次々と加わっていき、主要な役の全てが揃ってフィナーレを飾るもの。17世紀のヴェネツィア・オペラで、各幕が二重唱として終わり、その後、四重唱で終わるオペラが現れました。18世紀のオペラ・ブッファでは、アンサンブルの間に登場人物が交わり、ドラマが進行していくようになり、その規模も拡大していきます。こうしたアンサンブル・フィナーレの発展は、オペラの構成の側面にも影響を及ぼし、レチタティーヴォとアリア、すなわち叙述的な部分と叙情的な部分が融合されていくなどオペラ自体の発展にも寄与することとなりました。アンサンブル・フィナーレを効果的に用いた作曲家として、ペルゴレージ、ピッチーニ、パイジェッロなどを挙げることができます。モーツアルトのオペラでは、交響曲のソナタ形式の特徴を取り入れるなど、特に卓越したアンサンブル・フィナーレが見られます。『フィガロの結婚』第2幕における第16曲のフィナーレは、939小節、20分の演奏時間という大きさの中で次々と事件が起こり、音楽もそれに呼応して自在に変化するとともに、全体として驚くほど均衡がとれている最高傑作と言えるでしょう。



コンチェルタート concertato [伊]

ペッツォ・コンチェルタート、ラルゴ・コンチェルタートとも言います。19世紀のイタリア・オペラで、フィナーレの中に置かれ、ドラマの進行が一時的に止まり、登場人物がそれぞれ、そのときの心情を独白として歌い出します。アンサンブル・フィナーレやカヴァティーナ・カバレッタ形式から発展したアンサンブルの一種であり、歌手は音楽表現に集中することが多いです。



ストレッタ stretta [伊]

アリアや重唱、もしくは幕の最後の部分で、テンポを速めて緊張感を高めることによってドラマの盛り上がりを作り出します。



メロドラマ mélodrame [仏]

オペラの構成においては、オーケストラの演奏とともに、登場人物が歌うのではなく、台詞を話すことによって進行していく部分のこと。有名な例としては、ドイツのジングシュピールの流れから、ベートーヴェンの『フィデリオ』第2幕の墓堀りの場面、ウェーバーの『魔弾の射手』第2幕の狼谷の場面がよく指摘されます。もちろんそれ以降の作曲家も多くのオペラで採用しており、ヴェルディの『椿姫』第3幕でヴィオレッタ役が読む手紙の場面は、メロドラマによる高い効果が実現していると言えるでしょう。








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