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「歌唱法」に関する用語







ベルカント belcanto [伊]

イタリア語で「美しい歌」「美しい歌唱」を意味する言葉で、オペラでは声の美しさに対する最高の敬称とされています。その歌唱技術のことをベルカント唱法と呼ぶこともあります。ベルカント唱法は、オペラを歌うためのイタリアの正統な発声法であるとともに、イタリアに限らず、全てのオペラ歌手が体得することを目標とする発声法であり、その特徴として、美しい音色、柔らかでむらのないレガート、声区の滑らかな移行と幅広い声域、卓越した技巧などが挙げられます。主に18世紀のオペラ・セリアにおいて重要な要素として発展し、その後、19世紀にベッリーニのオペラ作品をはじめとするベルカント・オペラでその技術が大きな役割を担いました。その後、オペラの劇的表現、言葉の優先、オーケストラ編成の拡大、オペラの多国籍化等のオペラ創作の力点の移り変わりによって、様式としてのベルカント唱法は衰退しましたが、オペラ歌手が目指す歌唱法の理想としてその価値は変わっていません。



メッサ・ディ・ヴォーチェ messa di voce [伊]

発声法の一つで、ある長い音符を持続して歌うときに、前半クレッシェンドして、後半デクレッシェンドさせる技術。その間、いかに滑らかで美しい音色を保持するか、歌手の技量が問われるところです。



メリスマ melisma [伊]

歌詞の単語の1音節に、多数の音符が充てられているフレーズを装飾的に歌う部分。



コロラトゥーラ coloratura [伊]

細かい装飾音符が付いた技巧的で華やかな旋律で、軽い声を持つソプラノ歌手がその軽さを利用して高音域を歌う部分のこと。こうした旋律を歌うのが得意な歌手が、コロラトゥーラ・ソプラノと呼ばれることになります。



フィオリトゥーラ fioritura [伊]

イタリア語で花が咲くことを意味する言葉で、装飾の施された旋律のこと。ときにコロラトゥーラと同義に扱われます。



アジリタ agilità [伊]

細かい音符で書かれた速い旋律で、装飾的に使用されます。登場人物の喜び、悲しみ、怒りなどの心情や、狂気などの通常でない精神状況を歌として表現する際に使われることがあります。また、歌手の歌唱技術を誇示する箇所として置かれることもあります。



カデンツァ cadenza [伊]

旋律の終止の部分に挟み込まれた装飾的な楽句のことで、歌手の声の技量や、音楽性を披露する箇所です。主にアリアや二重唱などの終結部に置かれます。17世紀、18世紀のオペラでは、歌手が即興で華麗な歌唱技術を誇示するために使用され、アリアの音楽的な内容とは関連が薄くなります。19世紀の作曲家は、自らカデンツァを楽譜に書き込むようになり、音楽的な関連性を保とうとしました。ベルカントの衰退、アリアの区分の消失とともに、オペラにおけるカデンツァの必要性が減退していきました。



舞台ドイツ語 Bühnendeutsch [独]

ドイツ語圏の演劇や声楽曲などの舞台作品で使用される統一の発音規則。ドイツ語は各地方の方言がそれぞれ発展していきましたが、19世紀末の演劇界において、舞台で使用される明瞭で統一された発音体系が求められ、整理されました。特徴として、語尾の「-ig」を-ichと同様に発音する、語尾の「-er」を常にεrと明瞭に発音する、「r」を常に巻き舌で発音する、などが挙げられます。現代の歌唱法では、より自然な発音が追求され、口語に近い発音が選択されるようになっています。



ヴォカリーズ(母音唱法) vocalise [仏]

旋律を母音、すなわちa、e、i、o、uのいずれかのみで歌うこと。歌詞や音名、階名を用いません。発声の練習や、コンコーネの練習曲集などで使用されます。オペラの中でも効果的にヴォカリーズが挟み込まれることがあり、例えば、シマノフスキの『ロジェ王』第2幕でロクサーナが歌うアリア「ああ…!ロジェ王の血塗られた夢を追い払え」"A…! Uśnijcie krwawe sny Króla Rogera"は魅惑的なヴォカリーズ部分を伴い、また、マスネの『タイス』のクロビールとミルタールは笑い声を軽快なヴォカリーズで表現します。さらに、ラフマニノフの作品34の歌曲集の最終曲のヴォカリーズは美しく、多くの楽器のために編曲されています。



ア・カペラ a cappella [伊]

オペラでは、オーケストラの伴奏を伴わずに、複数の声部のみで歌う部分のこと。もともとは教会音楽として無伴奏による多声合唱曲を指しました。イタリア語で「礼拝堂ふうに」の意味。



アクート acuto [伊]

イタリア語で「鋭い」の意味。歌手の出せる最も高い音域の音のことを指します。



ヴィブラート vibrato [伊]

イタリア語で「震えた」「振動させた」の意味。声の圧力により、音の高さを微妙に揺らして音色に変化をつけること。声そのものの表現力に直結し、ヴィブラートの加減は歌手の芸術的な感覚が問われるところとなります。現代では古楽奏法の一例として、バロック期までのオペラでヴィブラートを極小としたノンヴィブラート唱法が扱われることがあります。








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