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1. 18世紀のオペラの主なジャンルで、本格的なオペラ、真面目なオペラの意味。オペラ・ブッファの反対語です。18世紀イタリアでオペラ・ブッファが人気となったことから、それまでのシリアスな内容のオペラをオペラ・セリアと言うようになりました。原則として3幕で構成され、通例、神話や古代の英雄物語など歴史上の題材を扱います。喜劇的な登場人物や場面は現れません。台本作家のゼーノ(1668-1750)やメタスタージオ(1698-1782)による同じ台本を多数の作曲家がオペラ創作に使用しました。オペラ・セリアでは、カストラートが活躍し、聴衆を楽しませるため、歌手が活躍する派手な舞台が設置されました。また、形式としてダ・カーポ・アリアが用いられ、これが発展します。その他の部分をレチタティーヴォでつなぎ、ドラマの進行を担いました。
2. オペラ・セリアを発展させた作曲家としては、A.スカルラッティやハッセ、カルダーラ、ペルゴレージなどがいます。ヘンデルはイギリスで上演を続けました。その後、アリアとレチタティーヴォという定型的で硬直化した構成を批判し、オペラ・セリアを改革しようとする取組が試みられます。グルックは『アルチェステ』の序文に示したように、オペラの劇の部分を改革しようとして合唱の役割などに変化を加えました。モーツァルトも『皇帝ティートの慈悲』を残しています。しかし、次第に公衆の劇場で人気を博してきたオペラ・ブッファ、ジングシュピール等に押され、オペラ・セリアは大衆の興味を失わせることとなりました。
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18世紀のイタリアで人気を博した喜劇的なオペラのこと。17世紀のヴェネツィア・オペラでは、シリアスな内容のオペラの中に喜劇的な場面が挿入されることがありました。しかし、台本作家ゼーノやメタスタージオの改革により、こうしたオペラ・セリアから喜劇的な場面が排除されていきます。他方、ナポリを中心に喜劇的なオペラが盛んとなり、イタリア各地でもこのようなオペラ・ブッファは聴衆の関心を呼び、数多く作曲されるようになりました。オペラ・ブッファの構成としては、アリアと重唱がレチタティーヴォでつながり、幕切れにはフィナーレとしての重唱が置かれています(アンサンブル・フィナーレ)。オペラ・ブッファでは、笑劇の中に日常的な人々が行き交い、叙情的な音楽や感傷的なドラマが入り込むと、真の人間模様が描かれるようになります。こうしてモーツァルトのオペラなど、現在まで芸術的価値を持つ作品が生まれました。
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グランド・オペラ(グラントペラ) grand opéra [仏] |
18世紀のフランスで流行したオペラ・コミックと区別して、正統なオペラを指してグランド・オペラと呼ばれ、19世紀のフランスにおいて主にパリ・オペラ座で上演されたオペラ作品のことを言います。フランス語の発音に即して「グラントペラ」とも表記されます。特徴としては、叙事的な悲劇、伝説を扱うこと、通常4幕から5幕で創作されたこと、台詞の部分はなく全て歌われること、大型の合唱が用いられること、華やかなバレエが挿入されることなどが挙げられます。主なグランド・オペラの作品は、ロッシーニの『ウィリアム・テル』、マイヤベーアの『ユグノー教徒』、グノーの『ファウスト』などです。ワーグナーの『タンホイザー』は、パリ・オペラ座における上演に際して改訂されたパリ版が存在します。ヴェルディの『ドン・カルロ』は当初、パリ・オペラ座のため、フランス語によるグランド・オペラの形で作曲されて初演されましたが、その後、イタリア語版に改訂されています。
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オペラ・コミック opéra-comique [仏] |
従来、コミックの字義どおり、滑稽な喜劇的オペラのことを指しましたが(コミック・オペラとして、イタリアのオペラ・ブッファなど共に喜劇的なオペラ一般を言いました)、今日ではフランスのオペラで、途中、ドラマが進行する部分を歌わずに台詞で会話をしながら進んでいくオペラの形式のことを表します。当初は、グランド・オペラに対して喜劇的な部分が主でしたが、ロマン派以降、オペラ・コミックの形式をとりつつ、悲劇的な作品も多く作曲されました。悲劇で終わるビゼーの『カルメン』はその典型でしょう。喜劇的な役割は、その後、オペレッタによって担われました。
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スペインにおける歌と台詞による大衆的なオペラの一種。17世紀半ばにスペインの王族が、サルスエラと名付けた王宮で、歌や踊りを挟んだ音楽劇を上演したのが始まりです。18世紀には、イタリアのオペラ・ブッファ、フランスのオペラ・コミックの人気に押され、次第に衰退しました。しかし、19世紀に入ると、民族主義とも呼応し、フランシスコ・アセンホ・バルビエリ(1823-1894)、フェデリコ・チュエカ(1846-1908)などが新しい作品を生み、劇場も建設されました。
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バラッド・オペラ ballad opera [英] |
18世紀にイギリスでよく上演されたオペラの種類で、イギリスの民謡や、流行の旋律を主とした音楽を地の台詞でつないでドラマが進行します。1728年にペープシュの『乞食オペラ』がロンドンで初演されて人気を博しました。当時のイタリア・オペラやプリマ・ドンナを批判したり、社会政治を風刺したりしました。10年ほどで衰退しました。
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18世紀からドイツで親しまれた歌が入った演劇のことで、主に喜劇的な内容を持ちます。ドイツ語で「歌芝居」を意味します。従来、ドイツでは、イタリア・オペラの上演が優勢でしたが、イギリスのバラッド・オペラ、フランスのオペラ・コミックに影響を受け、ドイツ語による音楽付きの劇としてジングシュピールが創作されるようになりました。形式としては、全てを歌わず、ドラマが進行する会話部分は地の台詞が入り、ドイツの民謡風の旋律が使用されます。ウィーンでは、1778年から、ヨーゼフ2世により、国民的なジングシュピールの上演が奨励されました。この間、モーツァルトの『後宮からの逃走』が上演され、また、モーツァルトは『魔笛』も残しました。ベートーヴェンの『フィデリオ』、ウェーバーの『魔弾の射手』は喜劇ではありませんが、形式としてはジングシュピールの形をとっています。民俗色を出したジングシュピールは、やがてドイツで興るドイツ国民オペラの発展に寄与します。19世紀後半にオペレッタが盛んになると、それに取って代わられました。
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18世紀後半に、捕らわれた主人公が救い出されるという内容のオペラがしばしば見られました。フランス革命を社会的背景に、様々な抑圧からの脱却や理想主義が表現されることから、「革命オペラ」「恐怖オペラ」とも呼ばれます。ベートーヴェンの『フィデリオ』が有名な例。
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小さいオペラ、小規模なオペラの意味。喜歌劇とも訳されます。イタリアのオペラ・ブッファの庶民的な笑い、フランスのオペラ・コミックの親しみやすさなどを土台として、その喜劇的な部分を軸に、より聴衆に寄り添ったものとして風刺と機知に富むオペレッタが流行しました。パリで活躍したオッフェンバックは100作品を超えるオペレッタを作曲して人気を得ていました。その後、オペレッタはヨーロッパの各都市に広がります。ウィーンで、スッペの『美しきガラテア』、J.シュトラウスの『こうもり』『ジプシー男爵』などの作品が上演された19世紀末は、オペレッタの黄金時代と呼ばれました。さらに、20世紀初頭にかけて、ハンガリー出身のレハールの『メリー・ウィドウ』、カールマンの『チャルダッシュの女王』といったオペレッタがウィーンで人気となり、白銀時代と呼ばれました。オペレッタは、イギリスやアメリカにも波及していき、アメリカではミュージカル誕生の基礎を作りました。
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オペラの中で、アリア、重唱、合唱、その他の音楽などを一つの楽曲として通して番号を振り、それらの分離可能なナンバーの間をレチタティーヴォや地の台詞でつなぐ形で作曲されたオペラのこと。19世紀初頭までは一般的にこの形式が用いられました。イタリア・オペラではロマン派を通して楽曲の区切りが存在しましたが、次第に音楽の連続性が重視されていきました。ドイツ・オペラでは、ワーグナーが早くから、オペラ全体を一つの楽曲として捉え、番号オペラに反対しました。やがて20世紀になってから、ヒンデミットやストラヴィンスキーといった作曲家が番号オペラとみなすことのできる作品を創作しています。
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ベルカント・オペラ belcanto opera [伊] |
18世紀末から19世紀初頭にかけて、ベルカント唱法の最盛期に作曲されたベッリーニやドニゼッティのオペラ作品。ベルカント唱法を駆使して大型のアリアが歌われるなど歌の力が重視されました。歌中心から次第に劇的要素も加味され、イタリア・ロマン派オペラの導入の役割を果たします。
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ワーグナーによって創始され、音楽と劇の要素が一体化することを意図し、総合芸術の目指すところとして楽劇が示されました。アリアとレチタティーヴォを中心とするイタリア式の番号オペラを批判的に見ています。楽劇の特徴としては、第一に無限旋律を導入し、常に音楽とドラマの流れがとまらないようにしたこと、第二にライトモティーフ(示導動機)により、歌だけでなくオーケストラが演奏する音楽にもドラマの展開の一翼を担わせたこと、第三に台本の題材には、人や民族に意味を持つ神話や伝説が採用されたこと、第四に大編成の管弦楽により、音楽表現の幅が拡大されたこと等が挙げられます。ワーグナーのオペラのうち、『ニーベルングの指環』以降の作品が、一般に楽劇と呼ばれ、その後のドイツ・オペラに多大な影響を及ぼしました。R.シュトラウスも『サロメ』『影のない女』などを楽劇と呼んでいます。また、ヴェルディをはじめとしてイタリア・オペラやフランス・オペラにも広くその考えが波及しました。
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民族主義のオペラ。19世紀のロマン派民族主義的音楽の高まりの中で、その国の言語、その国の物語、その国固有の音楽、民謡、舞曲を使用することによって創作されたオペラのこと。それまでイタリア・オペラなどの文化を模倣するだけであった国が、独自のオペラを生み出そうとしました。例として、ボロディン、ムソルグスキーによるロシア・オペラ、スメタナ、ドヴォルザークによるチェコ・オペラなどが挙げられます。
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ヴェリズモ・オペラ verismo opera [伊] |
19世紀末から20世紀初頭のイタリア・オペラに見られた「現実主義」「写実主義」と呼ばれるオペラ。日常生活に密着した生々しい事件を題材にして、人間の感情を劇的に表現しました。代表作、もしくは純粋なヴェリズモ・オペラとしては、マスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』、レオンカヴァッロの『道化師』があります。感情の劇的な音楽表現は、プッチーニの手法と連動し、『ラ・ボエーム』『トスカ』などの作品においても効果を発揮しています。
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少人数の歌手と小編成の管弦楽による小規模なオペラ。18世紀の小型のオペラ・ブッファなどを指すこともありますが、一般には20世紀以降、それまでのドイツ・ロマン派のオペラや楽劇の反動として、より内省的な表現・効果を追求し、作曲された小規模なオペラのことを言います。1940年代に、特にブリテンによって提唱されました。R.シュトラウスの『ナクソス島のアリアドネ』、ブリテンの『ルクレツィアの凌辱』などの例があります。
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20世紀に英語圏で発展し、歌・ダンスを主とした、より大衆に接近したショー的な要素の強い音楽劇。イギリスでオペラ・コミックやオペレッタから発展したミュージカル・コメディが流行し、その後、アメリカで特にブロードウェイで上演された作品は、短縮してミュージカルと呼ばれました。大別して明るく軽妙なミュージカル・コメディと、音楽・演劇がしっかりしたミュージカル・プレイに分けられます。ミュージカルでは、舞台装置としてマイクで声が拡張されることが日常的であり、この点でベルカント唱法をはじめ、一定の歌唱技術が要求され、かつ、それが芸術的な観点として第一の要素となっているオペラとオペレッタとは、別物です。
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オラトリオは演奏会形式で上演される声楽曲で、オペラとの違いから特徴を挙げると、第一に台本は宗教的物語を扱い、内省的な内容でオペラほど劇的ではないこと、第二に最初期はオペラのように衣裳と演技付きで上演されたが、基本的に演奏会形式であること、第三に物語を進行させる語り手が使用され得ること、第四に合唱の比重を大きく置いていること等が指摘できます。なお、典礼文や聖書に基づくミサ曲、レクイエム、受難曲はオラトリオとは言いません。
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オペラ・ガラ・コンサート opera gala concert [英] |
フランス語の「ガラ gala」は、祝典、特別上演の意味で、オペラ・ガラ・コンサートでは、複数の歌手が次々と舞台に現れ、有名アリアや重唱を披露したり、オペラの名場面を一部ハイライトで演奏したりします。記念的、祝祭的な性格を持ち、歌劇場やコンサート・ホールで上演されます。
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