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【作曲】
ジュール・マスネ(1892〜1894年)
【初演】
1894年3月16日 パリ・オペラ座
【台本】
ルイ・ガレ(フランス語)
【原作】
アナトール・フランスの小説『タイス』
【演奏時間】
第1幕 45分
第2幕 60分
第3幕 35分 合計 約2時間20分
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【時と場所】
4世紀、エジプト
【登場人物】
タイス(S): 遊女、高級娼婦
アタナエル(Br): 修道士
ニシアス(T): ギリシャ人の哲学者
パレモン(Bs): 修道士の長老
ほか
【第1幕】
時は紀元4世紀、舞台はエジプト。エジプト南部ナイル湖畔のテーベの修道士アタナエルは、地中海の商港アレクサンドリアの様子を他の修道士たちに話します。かの地はギリシャ人たちが快楽におぼれて退廃しており、その中心には女神ヴィーナスの化身と讃美されていた遊女タイスがいるというのです。アタナエルは、この遊女を神のもとに解放し、信仰の道に導くため、再びアレクサンドリアに向かいました。
アレクサンドリアに着いたアタナエルは、友人でギリシャ人の哲学者ニシアスの邸宅に行き、彼から遊女タイスを紹介されます。タイスの誘惑に怖れを感じたアタナエルは、ひとまずその場を立ち去りました。
【第2幕】
タイスの家を訪れたアタナエルは、自分の欲望ではない真実の愛を彼女に説きます。精神的な愛の前にうろたえるタイス。そこに彼女を誘うニシアスの声が聞こえてきました。アタナエルは、タイスが自らの道を選ぶように、朝まで外で待つことにしました。
翌朝、タイスは、アタナエルとともに、尼僧院に行く決心をします。アタナエルはタイスの豪奢な屋敷に火を放ちました。ニシアスが彼女を引きとめようと手をとりますが、アタナエルはタイスを連れて立ち去ります。
【第3幕】
重い足取りに苦しみつつ、アタナエルとタイスは砂漠を歩き続け、アタナエルは、オアシスで、タイスを修道女たちに引き渡しました。タイスが彼に永遠の別れを告げると、アタナエルはその意味にうろたえます。テーベに戻ったアタナエルは、修道士の長老パレモンに、タイスに心を奪われていたことを告白しました。
アタナエルは眠っている間に、タイスの幻を見て、彼女に死が迫っていることを感じ、女子修道院のあるアルビーヌに向かいます。そこで3か月間の贖罪の日々を過ごしていたタイスは、瀕死の姿で横たわっていました。アタナエルは自らの愛をタイスに告白しましたが、そのときタイスは聖女として天に召されたのでした。
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【1】 遊女タイスと修道士アタナエルの葛藤
タイスを信仰の道に導きながら、タイスへの愛に捕らわれた修道士アタナエル。このアタナエルの原著での名前はパフニュス。この名は原著のタイトルにも使用されており、原作者でノーベル賞作家のアナトール・フランスの中心的な意図は、アタナエルにあったのかもしれません。タイトルロールのタイスとともに、アタナエルの心情にフォーカスして見てみたいところです。オペラ『ル・シッド』や『ラホールの王』の台本を書いたルイ・ガレは、このタイスという題材をマスネに勧めました。『タイス』は、マスネの代表作『ウェルテル』の次に作曲されたオペラであり、マスネの作曲技法が熟練した時期の作品であると言えるでしょう。
【2】 誤解された名作
このオペラは、マスネと親しい関係だったとされる米国人のソプラノ歌手シビル・サンダーソンのために作曲されました。彼女は欧州各地でマノンを歌って好評を得ていました。サンダーソンはパリのオペラ座と契約していたため、マスネはこのオペラ座向きにバレエを加えるなどしてから初演となりました。『新グローヴ・オペラ事典』によると、このときサンダーソンは「図らずも」胸を露出する偶発事があったことから、このオペラはみだらなイメージがついてまわり、その後、1973年に米国ニューオーリンズで、タイス役のキャロル・ネブレットがオペラ史上初めて全裸で舞台に立つなど、内容とは異なるところで注目されてしまいました。
このオペラは、初演では成功を収めることはできていません。そこでマスネは第2幕の最後に新しいバレエの場面を追加し、第3幕にオアシスの場面を加えるなどの改訂を行います。そして1903年にイタリアで初演されてから人気が得られるようになりました。その後、海を渡り、米国のオペラハウスでも成功し、マスネの代表作の一つとなっています。
【3】 タイスの瞑想曲
ヴァイオリン・ソロの名曲「タイスの瞑想曲」は、このオペラの間奏曲(宗教的瞑想の間奏曲)の抜粋です。オペラを除けば、作曲家としてマスネの名は、一般には、このヴァイオリン曲の作曲家として知られているのみかもしれません。マスネの音楽について書かれたものをみてみると、叙情的、流麗、甘美、優美、感傷的といった言葉が多く使われています。「タイスの瞑想曲」を聴いてみると、まさにそのような言葉が当てはまります。この曲は、タイスが一晩かけて信仰の道に入る決心をするときに流れるのです。曲の直前には、タイスは「遊女タイスのままでいる」と叫び、笑い声をあげますが、それが次第にすすり泣きに変わるというト書きがあります。
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【CD】
アベル指揮
ボルドー・アキテーヌ管弦楽団、合唱団
フレミング(S) ハンプソン(Br) サッバティーニ(T)
(録音1998年、DECCA) |
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しばらく録音がなかった時期を経て、理想的な演奏がCDで発売されました。この精神的なオペラは、CDを聴いて楽しむこともおすすめです。このディスクは、ニシアス役のサッバティーニの参加がアクセントになっていて、歌手陣が充実しています。
【DVD】
ヴィオッティ指揮、ピッツィ演出
ヴェネツィア・フェニーチェ劇場
メイ(S) ペルトゥージ(Br) ジョイナー(T)
(録画2004年、Dynamic) |
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このオペラは2000年代になって優れたDVDが次々とリリースされました。ピッツィの演出と、メイとペルトゥージが確かな歌唱を聴かせてくれます。
【DVD】
ノセダ指揮、ポーダ演出
トリノ・レッジョ劇場
フリットリ(S) アタネリ(Br) リベラトーレ(T)
(録画2008年、ArtHaus) |
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衣裳やバレエの入り方に好き嫌いが出るかもしれません。フリットリとアタネリの歌唱が圧倒的に素晴らしいディスクです。
【DVD】
ロペス=コボス指揮、コックス演出
メトロポリタン歌劇場
フレミング(S) ハンプソン(Br) シャーデ(T)
(録画2008年、DECCA) |
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メトロポリタン歌劇場を舞台に、CD録音から10年を経てフレミング、ハンプソンが熟練の歌唱を披露しています。こちらもおすすめのディスク。
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