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仮面舞踏会






オペラ・データ

【作曲】
ジュゼッペ・ヴェルディ(1857〜58年)

【初演】
1859年2月17日 ローマ、アポロ劇場

【台本】
アントニオ・ソンマ(イタリア語)

【原作】
ウジェヌ・スクリーブの戯曲『グスタフ3世、または仮面舞踏会』

【演奏時間】
第1幕 50分
第2幕 30分
第3幕 50分  合計 約2時間10分



あらすじ

【時と場所】 
17世紀末、アメリカのボストン

【登場人物】
リッカルド(T): ボストンの総督
アメーリア(S): レナートの妻
レナート(Br): リッカルドの腹心
ウルリカ(Ms): 女占い師
オスカル(S): リッカルドの小姓
ほか

【第1幕】
時は17世紀末、舞台はイギリス支配下のアメリカ、ボストン。この地を統治するのは総督リッカルドですが、彼の命を狙う者も多くいます。リッカルドは、今度の仮面舞踏会の招待者名簿に、自分の部下レナートの妻アメーリアが入っているのを確認しました。実はリッカルドは、部下の妻に心を奪われていたのです。
さて、リッカルドのもとに、人々を惑わす女占い師ウルリカを追放してほしいと判事が頼みに来ます。そこでリッカルドはお忍びでその女占い師の正体を見極めに行きます。
驚いたことに女占い師ウルリカの家にいたのは、アメーリア。彼女は不倫の道から逃れる方法を尋ねていました。ウルリカは、深夜に墓地に生える草を摘むように言います。そして、そのことを物陰からリッカルドも聞いていました。
リッカルドも占ってもらうことにすると、最初に握手した者に殺されると言われます。このとき、何も知らない部下のレナートがちょうどやってきて、総督リッカルドと握手をしたのでした。
 
【第2幕】
真夜中の墓地にアメーリアが着くと、そこにリッカルドが現れました。二人はそこで愛を語り合います。そこに急にレナートが現れたので、アメーリアはあわててヴェールで顔を隠します。レナートは反逆者たちに囲まれて危ないということをリッカルドに伝えにきたのです。リッカルドはレナートに、女の顔を決して見ないように町まで連れて行くよう命じ、その場を立ち去ります。忠臣レナートはその命を守ろうとしましたが、反逆者たちが切りかかってきたため、アメーリアはヴェールを落としてしまいます。そこにレナートは自分の妻の姿を見たのです。
 
【第3幕】
レナートは総督への復讐を誓います。彼は反逆者と手を組んだのです。一方のリッカルドは、アメーリアのことをあきらめ、レナート夫妻を祖国イギリスに帰すこととしました。
仮面舞踏会の夜。レナートはリッカルド総督の小姓オスカルから、総督の仮装を聞き出します。アメーリアはリッカルドに近づき、危険が迫っていることを忠告します。そのとき、レナートがリッカルドに切りつけました。死の間際のリッカルドは、アメーリアは潔白だと誓い、レナートを無罪にするように言って、息絶えたのでした。



解説(ポイント)

【1】 国王暗殺の実話
 
このオペラの原作は、スウェーデン国王グスタフ3世が、ある仮面舞踏会の夜、アンカルストレーム伯爵に暗殺された実話がもとになっています。ヴェルディは、ナポリのサン・カルロ歌劇場から作曲依頼を受けて、非常に速いペースで作曲を進めました。しかし、国王暗殺をもとにしたこの物語は、検閲をパスすることができませんでした。そこで、比較的検閲のゆるやかなローマで、舞台をスウェーデンからイギリスの支配下にあった17世紀末のアメリカ、ボストンに移し、ようやく初演にこぎつけることができました。ローマの人々はこのオペラを熱狂的に歓迎したそうです。
 
【2】 仮面舞踏会を中心としたドラマの展開
 
仮面舞踏会は18世紀の貴族社会で大流行していました。身分や素性を隠して行われる舞踏会が、恰好の暗殺の舞台となりました。総督リッカルドとアメーリアの許されぬ恋を軸として、リッカルドの腹心レナート、小姓オスカルがその物語に厚みを加えます。さらに女占い師ウルリカの存在は、ラストの暗殺への伏線となっています。こうしたバランスのとれた登場人物とドラマの展開は、このときすでにオペラ作曲家として成熟した実力を持っていたヴェルディにとって、名作を生むのに十分な台本でした。
 
【3】 仮面舞踏会へアリアの競演
 
このオペラは、登場人物のそれぞれに聴かせどころがありますが、リッカルドとアメーリアの関係が発覚した後の第3幕から、力のある名アリアが続きます。まずはアメーリアが最後に息子を抱きしめさせてほしいと母としての願いを歌い、次にレナートが総督への復讐と失われた愛への悲しみを歌います。そしてリッカルドは、アメーリアをあきらめ、不吉な予感をも悟るアリアを歌います。この3つのアリアに、3人の心情がくっきりと表現されているので聞き物です。



おすすめディスク

【CD】
C.デイヴィス指揮
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
カレーラス(T) カバリエ(S) ヴィクセル(Br) ペイン(Ms) ガザリアン(S)
(録音1978年、PHILIPS)
 
カレーラスは、リッカルドの第3幕のアリアでヴェルディ・コンクールに優勝し、さらにミラノ・スカラ座へのデビューもこの役でした。大ソプラノ歌手、カバリエを相手にまったく引けをとりません。デイヴィスも手堅くまとめました。


【CD】
カラヤン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
ドミンゴ(T) バーストウ(S) ヌッチ(Br) クイヴァー(Ms) ヨー(S)
(録音1989年、Deutsche Grammophon)
 
カラヤン最晩年の録音。この録音の後、カラヤンが急死してしまったため、翌年1990年のザルツブルク音楽祭では、このオペラをショルティが振っています。そのときの映像はDVDでも見ることができます(TDK CORE)。カラヤンの落ち着いた、そして完璧な音楽は聴き応え十分。







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