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フランス革命は、オペラに外形的にも内在的にも影響を及ぼすことになりました。まずイタリアの大部分を占拠したナポレオンは、カストラート、すなわち去勢を禁止します。そのため、次第にカストラートの存在が影をひそめるようになり、その代わりはテノール歌手やメゾ・ソプラノ歌手が引き受けることになりました。また、伝統的なイタリアのオペラは、フランスのオペラや演劇から大きく影響を受けました。
ウィーンで『秘密の結婚』というヒット作を生み出したチマローザは、その後、ナポリに移り、晩年までイタリア・オペラ作曲家の巨匠として、オペラ・ブッファ、オペラ・セリアを発表しました。
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チマローザが亡くなって10年ほど経ったとき、驚くべき才能を発揮してオペラを次々と作曲したのがジョアッキーノ・ロッシーニ(1792-1868)です。
ロッシーニは特にオペラ・ブッファのヒット作で名声を得ており、『アルジェのイタリア女』(1813年、ヴェネツィア初演)、『イタリアのトルコ人』(1814年、ミラノ初演)、『セヴィリアの理髪師』(1816年、ローマ初演)、『チェネレントラ(シンデレラ)』(1817年、ローマ初演)がその代表例です。不思議なことにロッシーニは1829年、37歳のときにパリでグランドオペラ『ウィリアム・テル』を発表したのを最後に、オペラの作曲をやめてしまいました。
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さて、この頃のイタリア・オペラは、カストラートの時代がほぼ終わりを迎えていたものの、今度はソプラノ歌手、テノール歌手など、やはり技巧を駆使した歌を披露することが中心となっていました。イタリアはどうしても「歌」中心となってしまうのですね。
イタリアで生まれたこうした声に関する美的な感覚を表す言葉に「ベル・カント唱法」と呼ばれるものがあります。ベル・カントとは「美しい歌」を意味するイタリア語で、オペラ歌手の作り出す声の最高の価値観として評価されてきました。
プリマ・ドンナがベル・カント唱法を駆使して長大なアリアなどを歌い、その技術を披露するのに一役買う。そんなオペラのことを「ベルカント・オペラ」と言います。
ロマン派の時代がイタリアのベルカント・オペラの時代です。
ベルカント・オペラで有名な作曲家はベッリーニです。ベッリーニは『夢遊病の女』『ノルマ』『清教徒』など、美しい旋律を主体としたオペラを書きました。しかし、ベッリーニは惜しくも33才の若さで亡くなります。
そのライバルであったのが、ドニゼッティです。ドニゼッティは職人気質の作曲家で、その生涯のうちに約70作品ものオペラを書きました。『愛の妙薬』『ランメルモールのルチア』などのオペラは、現在でもよく上演されています。
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さて、1800年を過ぎた頃、イタリア北部のブッセートという町で一人の青年がオペラ作曲家を志します。その後、イタリアの国民的作曲家に成長するヴェルディです。
ヴェルディが最初に大成功を収めたのは『ナブッコ』というオペラでした。『ナブッコ』はイェルサレムの地を追われたユダヤ人が祖国を想って歌う情景が描かれていて、それが、当時オーストリア支配下にあったイタリアの祖国解放運動に呼応したのです。こうしてオペラ作曲家としての基盤を築いたヴェルディは『エルナーニ』『マクベス』などのヒット作を生みます。
ヴェルディの中期の作品には『リゴレット』『イル・トロヴァトーレ』『椿姫』という今日の世界中のオペラハウスでも人気のあるタイトルが並んでいます。その後、『仮面舞踏会』『運命の力』『ドン・カルロ』など、それぞれ充実したオペラを書き上げました。
後期の作品として、『アイーダ』『オテロ』があり、ヴェルディの名を巨匠にまで到達させました。
ヴェルディ最後の作品は、これまで書いてきたシリアスなドラマから一転して、『ファルスタッフ』というオペラ・ブッファとなっているところも興味深い点ですね。
あまりにヴェルディが大きな活躍をしたことから、その影に隠れてしまったけれど重要な作品としては、ポンキエッリの『ラ・ジョコンダ』、ボーイトの『メフィストフェレ』などがあります。
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1900年も近くなると、イタリアでは「ヴェリズモ・オペラ」と呼ばれるオペラがその潮流となります。「ヴェリズモ」とは写実主義のことで、ストーリーは日常生活に密着した現実の生々しい事件を題材にしています。
イタリアの楽譜出版社ソンツォーニョ社が懸賞募集した一幕もののオペラ選考会の一等に当選したのが、マスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』です。この作品の成功に触発されて、レオンカヴァッロも『道化師(パリアッチ)』を書き上げました。現在ではこの2つの一幕もののオペラがセット(ダブル・ビル)で上演されています。
他の重要なヴェリズモ・オペラの作品としては、チレアの『アドリアーナ・ルクヴルール』、ジョルダーノの『アンドレア・シェニエ』などが完成度の高いオペラとして親しまれています。
こうした流れの中で、『マノン・レスコー』で世に認められたプッチーニが現れます。出世作となった『ラ・ボエーム』は、貧乏をしながら芸術家を志していた卵たちの話ですが、プッチーニも苦学して作曲を学んだと言われています。プッチーニのオペラは、泣けるオペラとして日本でも高い人気を誇っています。『トスカ』『蝶々夫人』『ジャンニ・スキッキ』『トゥーランドット』など、オペラに興味を持った人なら誰でも一度は観てみたいと思うのではないでしょうか。
「歌」を重視してきたイタリアのオペラは、最終的にプッチーニの作品によって、世界中で歌による感動を沸き起こしたと言ってもいいでしょう。
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